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水戸家庭裁判所土浦支部 昭和36年(家イ)117号 審判

申立人 大山金作(仮名)

利害関係人 大山かよ(仮名)

相手方 大山賢次(仮名) 外一名

主文

一、相手方両名は申立人がその五女春子(相手方賢次の末妹)の結婚仕度費を調達するため利害関係人所有の土浦市大字○○字○一九四七番地の一○及び同大字○○○○一○五二番地の各山林内から金二〇万円相当額の立木伐採処分することを妨げる一切の行為をしてはならない。

二、相手方両名は申立人が養蚕をするためその所有の同市大字○○字○○○六五九番地、利害関係人所有の同市大字○○○○○二二八番地及び同字二二四番地の各畑内(計約一反五畝一八歩)に現存する桑樹の栽培及び収穫することを妨げる一切の行為をしてはならない。

三、調停費用は当事者各自の負担とする。

理由

申立人が事件の実情として述べるところによると、申立人方はその妻いし、利害関係人母かよ(当八五歳)、申立人の長男である相手方賢次、その妻である相手方ひろ子とその子女二人の計七人家族であるが、相手方賢次はその祖母である利害関係人かよと折合悪く、利害関係人の申立により当裁判所で昭和三四年(家イ)第一〇〇号土地引渡調停事件において同三六年二月一四日調停成立したものである。ところが相手方賢次等は家計の一切を掌握しながら未だ前記調停条項を履行しないばかりでなく、その父母である申立人及び妻いしを邪魔者扱いにし風波が絶えず、その上申立人に対し暴力をもふるう有様で、申立人等は日夜不安な生活をしているので、適当な方法で申立人等の家庭の調整を求めるというにある。

そこで本件記録によると、申立人は小学校卒業後昭和一一年九月父定吉の家業である農業を継承してきたが、その性極めて粗野で、利害関係人は申立人の母で、その性気丈なること、相手方賢次は申立人の長男で、石岡農学校を卒業し、特に昭和二七年頃相手方ひろ子と結婚後申立人との折合が悪くなり、互に屡々暴力を振うこともあつて、相手方ひろ子も申立人等に対し反抗的な態度に出る有様なること、相手方賢次は申立人と利害関係人所有の田畑計一町四反四畝九歩(内申立人の桑畑一反五畝一八歩)を耕作し、申立人所有の居宅(建坪三五坪)内に同居しながらその収益は挙げて相手方両名と二名の子女のみの生計に充て申立人等とは全く竈を異にし、申立人等に対しては相手方等より与えられる食糧だけで生活していれば満足すべきであると放言している有様なること、これがため利害関係人は相手方賢次に対し昭和三四年三月申立人の二男和幸(相手方賢次の弟)が世帯を持つ際、続いて同年一一月自己の生活不安からいずれも当裁判所に家事調停を申立てたこと、申立人はその所有の土浦市大字○○○○○六五九番地、利害関係人所有の同市大字○○字○○二二八番地及び同字二二四番地の各畑内(計約一反五畝一八歩)に栽培している桑樹によつて養蚕を営みその得た収益と相手方賢次以外の子女達から小遣銭を得て生活していること、従つて申立人とすれば今後も養蚕を継続していきたいこと、申立人は三人の娘は縁付けたが末娘春子(当二三歳、現在東京都墨田区○○町○二丁目△メリヤス株式会社に勤務)が昭和三七年四月田辺治、林忍両名の媒酌により後藤明男と婚約成立し、同三八年四月に挙式の予定になつており、相手方賢次からその結婚仕度費の調達を得る見込みは全くないので、申立人及び利害関係人はその所有財産に照し、農作に影響のない利害関係人所有の土浦市大字○○字○一九四七番地の一○山林一反二三歩及び同大字○○坪一○五二番地山林二反九畝一二歩内の立木の一部である二〇万円相当額を伐採処分し、その仕度費に充てる意向なることが認められる。

以上認定の事実によると申立人等親子の情誼としてその分に応じた前認定の末娘春子の結婚仕度費の調達方法並びに申立人等の生計費を得るため桑樹の栽培及び収穫することは相当であつて、相手方両名はこれを妨げる理由は毫末もないが、これを妨害する虞れがあるから、主文の通り審判する。

(家事審判官 山口昇)

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